五キロメートルほど走り市街地を抜けると、にわかに土地が広がりはじめた。絨毯のように咲き乱れているアーモンドの花々を越えた向こう側に、オリーブだろうか、規則正しく並んでいる木々があった。ほかにぶどうやたまご形の葉をしたコルク樫を栽培している場所が目立つ。ポルトガルの工業化はヨーロッパの中では一番遅れており、産業では、どうしてもワイン醸造や、柑橘類を中心とした農産物などに頼らざるを得ない。事実、コルクは世界一の輸出量をあげている。だが、土地そのものについて言えば肥沃な土地は少ない。理由のひとつに、大航海時代、当時の施政者らがあまりにも外へ目を向けすぎ、足もとの整備がおろそかになってしまった、という見方がある。中世の大土地所有制度についても、貧しい小作農の上にあぐらをかいていた権力者らは、ムーア人が残していった謹漑溝に手を加えることもなく土地はやせていく一方であった。生来のなりわいを大切にした方がよかったのか、勢力を外へ広げていく方が正しかったのか、という判断は、時がたってはじめてわかることなのだろうか。青い空を背景に、白い壁にオレンジ色の屋根をした家がところどころにかたまっているほかは、ゆるやかな丘陵が続いている。誰でもがスケッチ出来そうな単調な風景ばかりだが、それを結んでいるのが、薄く仕上げたアスファルト道路である。ポツンと立っているバス停の前で、中年の女性がこちらに向かって手を上げていた。つばの広い帽子にネッカチーフ。